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■RPGゲームの中の剣
ファンタジーの世界を描くロールプレイングゲームでは、まず剣がでてこないものは ないといっていいくらい、多数の剣がでてきますネ.それらは、想像上の剣であることも多いですが、 実際に過去に西洋や東洋で使われていた剣がモデルになっていることもあります.
特に実在の剣が多くでてくるRPGは、次のようなかんじです.
★ウィザードリィ
むちゃくちゃ強い忍者、妖刀ムラマサ最強伝説など、RPG独自の武器基準を 最初にでっちあげ...いや作ったと思われるゲーム。正確さはともかくとして、 日本の文化をこれほど丁重に考えてくれたことに感激したものじゃ。日本の武器が 聖剣エクスカリバーより強いなんて、ヨーロッパや日本じゃぜーったい考えられないゲームで、 これが初期RPGスタンダードとなったことの異議、いやちがった、意義は大きいのだ。 D&Dなどと違い、著作権問題にもきわめて寛容なとこもいい。
◆ロマンシングサーガ・サガフロンティア
すみません、ほとんどの剣の名称を覚えた のはこのゲームだった。すっかり忘れてた。非日本・非中国圏アジアの刀剣がぞろぞろでる 数少ないRPG。
◆キングスフィールドシリーズ
主役の剣以外、ほとんど全部実在する.
◆ファイナルファンタジー
意外に,実在の剣が多いんです.また、ファンタジーの古典に準拠した武器多し。
◆幻想水滸伝
中国ものについては実在の武器.しかもレアもの。
■西洋の剣のうんちく
片手剣(Single Handed Sword)
さて片手剣と両手剣がありますが、どう違うかなというと、片手剣は体を 横にして使うので、相手からみると切る部分が少なくて防御も楽になります。 (除くグラディウス。理由はこのページの下のほうみてね) 反対の手で楯や防御ナイフ(相手の剣が振り下ろされた時に、直角に受け、 相手の剣を折る目的で使うナイフ。左で持ちます。)ももてます。 何より軽快に動かせるので素早い攻撃ができます。
↑イラストはアジャンクールソード.100年戦争時イギリスの武王ヘンリー5世が, Agincourtの戦いでフランスに圧勝したときのイギリス軍の剣...なんだけど、 それはどうでもよくて、 ヨーロッパの一般的な片手剣のいいモデルがなくて、これにした。 「アジャンクールの弓」は有名なんだが、「剣」なんぞがあるのは、 CAS Iberia社のラインナップくらいである。
ヒストリカル・フェンシング、歴史上の欧州の戦術家たちが 書き残した、実戦のための剣術の文献によれば、中世以前の片手剣の剣術は、原則両手を使います。 右に剣、左に防御ナイフあるいはバックラー(盾)です。
だってあなた実戦ですから。後ろからも横からも敵きますから。 全力あげて戦わないと命がありませんから。
中世後期、ヨーロッパ剣術戦線に異状あり。両手剣の大ブームです。 携帯できない、1.2m以上の長さの長剣。なんでこんな使いにくい ものが?ああしかし、非力な片手剣と小さな盾を手に、両手剣をもつ 対戦相手と、向き合ってみてください。相手がたとえ素人でも、 こう感じるでしょう、「勝てない」。もう見た瞬間、本能で。
射程が違う。威力が違う。 懇親の力で振り下ろされたら、バックラーや防御ナイフでは受けきれない! では剣では?エッジで受けたらへし折られる。フラット(剣の平)で 受けたら、たぶん曲がる()。何より大型剣の決めの一撃を、 片手で受けること自体が、ムリ。手を痛めちゃうよ。
唯一、受けきれそうな方法は...手がふさがるバックラーはやめて、 アームガードにする。剣をシース(鞘)に入れた状態でグリップと 鞘を両手でしっかりもって、剣の中央付近で相手の剣をうける。 できれば相手の剣を折るか 壊す。そのあと鞘を投げ捨てて剣を横に振り、相手の首をはねる。 ...これなら1撃だけなら、なんとかなりそう?もしくは、 命がけで一撃をよけ、相手の射程の 内側にとびこみ、剣を返される前に敵の首をきる...とか?
しかし、一撃必殺の重厚長大剣のブームは、同じく一撃必殺の拳銃の 登場により終わりを告げます。 ルネッサンス以降の剣は、片手で軽くふれ、携帯のじゃまにならない レイピアになり、あの「マスク・オブ・ゾロ」の華麗なるレイピア・ フェンシング殺陣の時代に入るのデス。
←防御ナイフの発展型、ルネッサンスのソードブレイカー
この溝のどれかで相手の剣をうけ、切断する...ようです。よほどしっかり した材質でつくらないとだめでしょうね。中世初期の防御ナイフは資料が なかったのですが、だいたいこんなかっこうでは?
全体で45cmくらいの小型の剣。溝の幅からして、両手剣のたぐいは 折れなかったんんじゃないかなあ...
ハンド・アンド・ア・ハーフ・ソード
さて、中世初期〜ルネサンスのヨーロッパ戦線では、両手剣と片手剣の中間に位置する ハンド・アンド・ア・ハーフ・ソードが非常に重要な地位をしめています。 ハンド・アンド・ア・アハーフの邦語訳が「片手半剣」らしいのですが...() あまり聞き慣れない上に、片手+半剣?と誤解されやすいので、ここでは長いですが 正式名称のハンド・アンド・ア・ハーフを使わせていただいております.ご辛抱下さい.
↑ワーソード。ハンドアンドハーフの一種、と思われる。
◇様々なハンド・アンド・ア・ハーフ・ソード
・アイルランドのハンド・アンド・ア・ハーフ
・フランスのハンド・アンド・ア・ハーフ
・スコットランドのハンド・アンド・ア・ハーフ
・CAS Iberiaのハンド・アンド・ア・ハーフ
↑ハンド・アンド・ア・ハーフの例として、ワーソードとバスタードソードが並んでのっています。
☆様々な国・時代のハンド・アンド・ア・ハーフ・ソード
↑ヨーロッパ13〜16世紀の様々なハンド・アンド・ア・ハーフが まとめてのってます。その中の1本だけが、バスタード・ソード。
念のため書きますが、ハンド・アンド・ア・ハーフは剣の大分類名であって、バスタードソードの別名ではない!。原因は わかってるわよ、新紀元社の武器事典が2冊とも「バスタードソード、またの名を ハンド・アンド・ア・ハーフともいう」と書いてあるから、それをそのまんま書いた のでしょう。その記述は間違いではないが、イコールではない。
ついでに、バスタードソードは、背中に背負う剣でなくてはならない。
☆バスタードソード
ハンド・アンド・ア・ハーフ・ソードは重さも長さも中間で、腰につけるタイプも 背負うタイプもあります。ゲーム界で 一番有名なハンド・アンド・ア・ハーフは、細身で長く背中に背負う剣・ バスタードソードでしょう。背中に背負わないとバスタードソードとは言わないのだ。 両手剣と片手剣のいい点を受け継いでおり、(注:切る剣と、突く剣のあいのこだから、 という説もある)混血の(あるいは雑種の)剣の名称も納得できます。
この剣について、時々ある勘違いですが、Buster(破壊者)から派生したBusterd という言葉とは関係がありません.Bastard Sword(混血の剣)とスペルがちがいますね.
※バスタードソードの分類については、こちらを ごらんください。
↑代表的ハンド・アンド・ア・ハーフ、バスタードソード。 直角の細く長いガード,すっきりした木のグリップが 後期バスタードソードの定番. 本当はもっと刀身が細い!().この絵しっぱい.
※市販RPGでも「破壊者の剣」という解説がでるのもあるので,なんか誤解が広まったような、...と書いたのが3年前。だってGooで検索すると、バスタードソード(破壊者の剣)っていう解説がいっぱいひっかかったのだ。ところが!2002年8月現在、バスタードソードがひっかかる件数は10倍になったが、1つたりとも「破壊者の剣」と書いてあるページがなかったのだ!すごい改善ぶり。新紀元社の武器事典とかのおかげ?まさかゲームHPの作者がそろってここのページを見たとは思えないし。
それから、最初の頃、萩原先生の有名なまんがバスタード!!を、 Busterdと書いてたのですが、大間違いで、後者Bastardの方です.ごめんなさい. ただし、BASTARD!!は副題は「暗黒の破壊神」。間違えやすいデス。
◇Glamdring
この片手でも両手でも...のバスタードソード。1.2m以上。 長いグリップをもつこの剣...と似たやつを〜、買ってみました(^^)。 海外からの通販、ユナイテッド・カッタリィ社のハンド・アンド・ ア・ハーフGlamdring。刃物メーカーが作った本格派。すみません、前ステンレス とかいていたんですが、違う。ステンレスのやつもありますが、それは 銃刀法にひっかかるので、日本では持てません。私のは真鍮製のものでした。 お詫びします。また、税関にひっかかるのをさけるため、ブレードは研いで ありません。(※日本への輸出になれてない海外ショップで買うとき、 要注意!日本で、刃がといである刀剣を所有するには、刀剣を登録する必要が あります。未登録ものはマジで税関で止まります。 Not-Sharpened Blade,pleaseとお願いしましょう。注意書きがないレプリカは たいてい研いでないものですが....)
感想。重い。すっごく重い。どうみても両手剣だろ!こんなもん、片手でブンブン振り回す強者なんているのか? いるのか?
それからもう1点。これをベルセルクのガッツさんのよーに背中に 背負った場合、そのままでは抜けません。さやを背中にがっちり固定 しないで、上の方だけ固定するようにすれば抜けますけど。
でも剣の下を固定してないと、歩くときとっっても、歩きにくいです。
※様々なバスタードソードレプリカを ごらんください。
・西洋刀剣の有名メーカーCAS Iberiaのバスタードソード。商品番号の015PPがほとんどバスタードソードの代名詞である。
・16世紀ドイツのバスタードソード
・ゴシックバスタードソードの本物?の写真
・CAS以外の会社のも...インペリアル社のアイリッシュ・ハンド・アンド・ア・ハーフ
☆ワーソード ヨーロッパのワー・ソードは,大ざっぱにみればどれも直刀で似ていますが、 やはり国ごとに特色があります.
←正式なワー・ソードはハンド・アンド・ア・ハーフです。グリップ(柄)は 真鍮などの金属ですが、トレドソードと違い、丸みをおびて刀身と別の材質です。 RPGでは普通の冒険者たちの剣ですね。片手でも両手でももてます。
さて、他にいろいろ。
☆ワー・ソードより剣が細身で軽量に作られた,だれでも使える片手剣アーチャーズソード。 簡易型の剣といえます。
☆片手剣なのに幅が広く、軽量化のミゾが普通より幅広くほられている北欧の ノルマン・ソード,
☆それをさらにガッシリさせたバイキングの両手剣
■西洋刀剣の分類■
西洋の中世〜ルネサンス、ゴシック期の長剣の分類について、 簡単にまとめてみました。
☆クルセイダーズソード
クルセイダーズとは十字軍のこと。十字軍の剣は大きく2種類あります。
←☆断面が円に近い木製グリップと円弧を描くガードのクルセイダーズ・ソード。 たいへん特徴的な剣で、一目でわかります。
←☆十字架の形にみえるように作られた直角ガードの,やはり十字軍の剣です。 ファイナルファンタジーで名前がでる「ライオンハート・ソード」もその一種で、 ガードが直角ではなく、やや刀身側にカーブしたかっこうです。
☆百年戦争時のイギリスのエドワード黒太子の、スマートな黒の剣 ブラックプリンス・ソード、
☆中世に大国家を築いたテンプル騎士団の,先にいくほど細くなる独特の形の 大型剣テンペラーソード
....などなど.
☆トレドの剣
←これは唯一の実写画像、偶然に骨董屋から買ったティソナ.剛健な刀身で知られる イベリア半島の名工たちの作品トレド・ソードの1つ、Tizona del Cidという種類の 剣です.ぺちゃんこの金属の グリップ,刀側にそった装飾的なガードが特徴の片手剣です.
これ、サビサビなので(^^)、ちゃんとしたトレド・ソードの美しさは以下の ページでみてください。
・数ある武器ショップ通販ページでも最も美しいディスプレイをしているメディーバルストアのティソナ
・ティソナの姉妹剣エル・シド・コラーダ
イベリア半島の剣は、アメリカ産の初期RPGで採用されなかったのが痛く、 現在の日本のRPGでもほとんど出てきません。しかし、実際の刀剣界ではトレドの 剣は刀剣の品質最高のブランド名で、たとえばクレイモアやライオンハートなどでも、 トレドで作られたとなると、価値も高くなるのです。
トレドの剣(イベリア半島で作られた剣)は、形により呼称がつけられています。 Tizona Del Cidは中世の英雄(El Cid)カンペドールの2本の剣の1つです。もう1本は ガードがS字のカーブを描いた美しい剣El Cid Coladaです。どちらもガードの形から 装飾的に見えますが、ヒルト(ガードから下・柄全体)とブレード(刀身)が一体となった 剣は、持ちやすさや外見より強度を重視した頑丈なもの。一体型ということから、 ヒルト部分が重くなりすぎるので片手剣ですが、他国産の大型剣と打ち合っても 負けるとは思えません。ぜひぜひ、今後のRPGで使ってあげてほしいなーとか、 思ったりします()。
☆グラディウス
ローマ帝国の剣、グラディウス。古いです。 グラディウスはゲームにでる剣としては代表的なショートソード。
グラディウスは、映画のゾロのレイピアみたいに体を横にして使う片手剣とは、もう全然ちがって、射程がやたらと短いため、正面むきあって敵と戦うようです。
しかし何しろ時代が古く、今ほとんど資料がないので、実際どうやって使って いたのか???
■映画:グラディエーター
待つこと1年、とうとうグラディウスの いい資料に巡り会えました(^^)?。映画「グラディエーター(剣闘士)」、タイトルからしてわかるようにグラディウスでずっぱり、ロングソードとまったく異なる 素晴らしいショートソードアクションが見られる映画ですー(^^)。
さてこの映画、全編にわたりショートソードの戦闘がでてきます。
コロシアムでの試合では、片手にグラディウス、もう片手にバックラーみたいな軽快な盾をもって戦うようです。とにかくひたすら射程が短いので、剣の試合ていうより、格闘技に近い....運動神経こそ全ての戦いですね。こわ....
剣をたてに横に上に下に、自由にふりまわして、かつ相手の上から下からくる剣を盾でうけ、これ、おそらくフェンシングの技術も剣道の技術も 役にたちません。いかに素早くふりまわすか?が勝負をわけてるみたいにみえます()。ホント独特のアクションです。射程の長い武器があいてではどうするのかな?と思ってたら、ハルバードみたいな槍をもった相手がでてきたとき、やっぱり主役のラッセル・クロウはポールを切断してましたね()。
グラディウスが、ローマ帝国の戦争に使われたかは、映画ではよくわかりませんでした。戦争の主役はマジック・ザ・ギャザリングなどでおなじみ投石機と、石弓と火弓、でっかい盾でしたから。もしかすると、剣の試合にばかり使われた武器なのかもしれません。
「グラディエーター」のシスコン悪役コモドゥス帝は実在の人物で、ホントに自分で選手として試合にでてたそうです。主役マキシマス将軍は架空の人物ということです。