■どーなってるの?西洋刀剣分類問題■
もはや避けて通れなくなってしまった。西洋の中世〜ルネサンス、
ゴシック期の長剣の分類について。
ざっと思いつくのを並べただけで次の分類名があります。
・ロングソードLongsword
・ブロードソードBloadsword
・グレートソードGreatsword
・両手剣Two-handed-sword
・バスタードソードBastardsword
・ハンド・アンド・ア・ハーフHand-and-a-half-sword
・サイドソードSidesword
・騎士の剣Knightly-Sword
・ワーソードWarsword
他にもライディングソードとか多数...
これらは全て原典がヨーロッパ文献で、物語で作られたなどの
フィクションはありません。若干、ゲーム内で使われたために、混乱をきたして
いるのもありますが、とにかく創作はない。
こんだけの種類が今、用語として使われているのです。
じゃ、それぞれの違いは、というと.....
じつは、西洋刀剣の専門家ですら、よくわかって
おりません。ブロードソードとロングソードがどう違うかなんて、
だれも知らない。グレートソードと両手剣の違いも。
詳しくはミニ論文
「長剣というものの、可能な限りの分析」ごらんください。(注:英文)
このミニ論文では、重要な参考文献についてのべられている。
ロングソードの定義や使い方の記述は、根拠が2種類ある、それは最新の
剣術論文によるものと、歴史上の剣術指南書によるもの。前者のうち、
最もすぐれているのはジョン・クレメンツの剣術本Medieval Swordsmanship(1997)
であり、ほとんどの英語の剣術HPで参考にされている。
またシドニー・アングルによるThe Martial Arts of Renaissance Europe(2000)も、
新しくてよい本らしい。クレメンツがお勧めですといってます。
また、長剣の実物についての
本は「ウォレス卿の剣コレクション」(1952)という写真集がだれもが参考にした
基本文献らしいですが、他に博物館のコレクション集などの実物の武器の写真集が
(ヨーロッパでは)でています。
さて当「剣と弓の物語」も、上記の有名な
クレメンツのMedieval Swordsmanship(邦訳すると、中世の剣術、かな)を、
かなりの部分で
参考にしてたりします()。そのクレメンツが、
最近、「ロングソード」の話で何をいってるかといったら、
「今、剣の分類はおよそはっきりしていない。たとえば、ロングソードと
グレートソード、あるいはグレートソードと両手剣の間の
線引きなんて不明である。ここでは便宜上、ロングソードという分類に、
グレートソード、バスタードソード、エストックを含めている」
◇原文はこちら BY John Clements
..だそうです。...ジョン・クレメンツがわからんものを、
私らがわかるわけがなかろう()!
特にブロードソードは混乱しており、片手剣にはいってることもある。
短いが両手剣であるバイキングの剣との区別がややこしい。(当HPでは混乱するので扱ってない^^;)
同じく混乱中のバスタードソードBastard Swordは、歴史上のものが残存しているので、
明らかにその名称の剣が存在したことは確かだが、定義は
あいまいである。バスタードソードの条件は、外見から次のとおり。
・背中に背負う長い剣。1.2mくらい。
※背中に背負ってなければバスタードソードではないらしい。
・ブレード部分の幅は狭い。
・グリップが長い。
・剣は両刃、ヒルトはシンプルな十字型。手を保護する
リングがついているものもある。
しかしそれでもあいまいで、博物館所蔵品の説明に「Two-handed bastard sword」
などというわけわからん記述もある。(それなら、ただの両手剣だろ!^^;)
Bastardとは、庶子、私生児、雑種・混血を意味する。この剣の場合、
ルネサンスの文献に出てる解説から、明らかに最後の雑種である。
雑種の剣・混血の剣とは?
何かと何かの雑種、であるわけだが、説1が両手剣と片手剣のあいのこ、
説2がカット・アンド・スラストのあいのこの2説がある。
当HPでは、検討の結果、いちおう前者を採用している。
バスタードソードはその「雑種」の名から、またの名をhand-and-a-half
としている海外のHPもいくつもある...つまりそれだと、バスタードソード=
ハンド・アンド・ア・ハーフということになる。
その記述からして、ある1つの有名なHPにその記述
があり、それを他のページがまる写ししているようにみえる。
しかし実際、それだと、剣の分類はとても困る。
バスタードソード以外のハンド・アンド・ア・ハーフは、
中世後期からルネサンスにかけ、けっこうたくさんあるからだ。
特に腰につけるタイプのグリップが長い剣。両手剣に近い長いグリップだが
全体的に小柄な剣で、戦争では最もよく使われたのではないかと思う。
少なくとも携帯しずらいバスタードソードよりは。
現代におけるバスタードソードは、シンプルなデザイン、軽快な両刃の細身の
鋭いブレードで、長くリーチもある。両手でも片手でも持てる長いヒルト、
防御にも使える長めのクロスガード。...強力なのに使いやすい、
すばらしい剣だ!
しかもバスタードソードの場合、市販品のほとんどが、
ルネサンス時代の個人所有のホンモノのレプリカ、最近の改良品とか
ではないのである。
海外各地の
ヒストリカル・フェンシングのクラブでも、バスタードソードを使う
殺陣(..西洋ではなんていうの?)は、大変人気が高い。
しかし、中世からルネサンスの文献では、バスタードソードの剣術の
記述はごくわずかである。その理由は、おそらく、いつも携帯するのに
向かないから。
色々な体格に兵士が常時携帯で行軍するには、大きすぎる。背中に背負うと
その場では抜けない。この手間をとるなら、どうせなら強力な両手剣を
もっていくということなのでしょう。
現代は日常で使用なんかしないから、純粋に使い勝手と威力とかっこよさで
人気なのでしょうね。私が持っているレプリカは、ティソナ・エル・シド
とこのバスタードソードなのですから。
えーそれで、その、バスタードソードだけでこんだけ混乱しているのに、
ハイランダーの剣は?ナイトソードは?レイピアは?グレートソードは?
なんて考えてられないよー!
..えーというわけで、ここでは単純に両手剣、片手剣、ハンド・アンド・ア・
ハーフ(ハーフソードと略すことがあるらしい)の3種に分類しています。
どの剣をどれに入れるかの分類は....私がてきとうに決めてます。
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