Haruka2 Essay
検非違使の実務

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 彰紋「なんてカッコしてんですか!幸鷹殿」
 幸鷹「すみません、衛府の督クラスの武官の制服ってアクセサリーが多すぎて
   動けないのです。あまりに不自由なので、本年度から尉以上は全員、
   衛門府尉の制服にしましたから。」
 彰紋「かまいませんけど、そのカッコで殿上は却下ですからね!」
 幸鷹「すいませんが続きは帰ってからききますから!」
 彰紋「ハイいってらっしゃい...(僕以外に見つからないようにって意味なんだけど...)」

 ☆上図の検非違使尉(=衛門府尉)の狩衣は、前をあけて着てOKらしい。
 ☆衛門府武官は褒(上着)は白である。褒が赤だと特殊任務係である。
 ☆それに対し、近衛府武官は褒は色々カラフルである。
 ☆衛門府と近衛府の中間を警備している兵衛府は?...不明、ちと影が薄いかも。
 ☆衛門府衛士はパトロール時も身分証明の弓矢は必携である。
  従って自動的に、検非違使も弓矢必携である。
 ☆検非違使はヨロイは着ない。甲冑を着ているのは随兵という傭兵である。


■検非違使別当の実務とは?
 別当職について。神社の調査をしている私には、別当というと 社寺の別当が浮かぶのだが()...
 まず、検非違使とは。律令にのってない官職である。
 左右の衛門府(内裏の外を警備するのが衛門府。貴族の警備が近衛府、 内裏の中の警備が兵衛府である)から 選抜された衛士たちなので、検非違使は皆、衛門府の役人の兼任である。 別当は左右どちらか衛門府の長でもある。つまり、左右衛門府 ニアリイコール検非違使庁。ただし左右衛門府は350人くらい役人 がいるが、検非違使は数十名、精鋭部隊らしい。

 衛門府衛士と検非違使は、制服が同じなので 見た目がそっくり...いや同じである。衛門府衛士は、 必ず弓と矢筒(靫)を携帯している。弓をいつももってるので、 衛門府は別名「靫負司(ゆげの つかさ)」、検非違使庁は「靫負司庁」なんだって。 うーん、かっこいい。
 ただ上級管理職の佐と別当はまさか制服は着ていまい...。

 検非違使の管理職の皆さんは何をしてるのでしょう? えーと別当直下の佐は、 いわゆる総務。 現場にいませんな。その下の「尉(じょう)」から下が、 現場に出る武官。貴族が任命されるのですが、反乱の追討や 事件の裁判を行う職です。 源義経は判官とよばれますが、この衛門府の「尉」に任命 されていたからなのデス。

 では長である検非違使別当の仕事をみてみましょう。
 別当は検非違使庁では、一番えらいヒト。まず「これこれこのような事件があり、 このように処理した」という、検非違使佐以下府生(見習にあたる)までで 行う「政」なる会議の結果に目を通す。最も多いのが庶民の 死体の処理のはずだが、これはさすがに別当までは報告があがらない かも...。別当宣がいる場合はサインする。
 死体の次は、ドロボーやケンカの処理とかであろう。これらも目を通し損ねる と、たぶん、なんか報告すべきものがあった場合にまずいんだろうなあ。次に、京のあちこちからくる陳情書のような ものを決済する。要求を受けて実施するか、理由を書いて 断る、らしい。さらに、太政官たちから「京の治安を 守る」関連の仕事をいいつかるらしいが、詳細が不明。

 つまり、これらの文書の処理と、陳情解決のための 指示を文書で出すのが別当の日常業務なのである。 思いっきりデスクワークやんか。 あんだけ京中走り回ってる別当は、歴史上おるまい....


●平安後期の陣定
 この項目のあらかたは、平安朝のお役所実務事典といえる 「中右記」が元になっている....のですが、別の資料から1つ あげます。「平松家文書」より。
 陣定の議題の多くは、京の問題と、国司が出す上申事項である。 太政官が左近衛府に集まり、太政大臣あたりが議長となり、陣定が はじまる。陳情書...じゃなかった上申事項はまず、天皇に提出され、 それから陣定に回ってくる。
 上座から順に上申書に目をとおし、末席にいる書記が読み上げる。 それから、末席の太政官から、順に意見をのべる。 上の者を気にせず、自由に意見をのべるための配慮らしい(!)。 で、多くの場合、満場一致などは ない。これが会議の第一段階。第2段階は、天皇がその様子を みて、議を決する。つまり天皇の意見が最終決定なのだ。
 この太政官の中に、何名地方官経験者がいたか、というのは、 大きいよーな気がするぞ....菅原道真みたいな。

 気になったのが陣定が開かれる回数。年に10回程度とか。 ...ん?はるか2では月3,4回はあったような..?しかし年10では、ぜんぜん政務上たりないでしょうが!...つまり、陣定で決定される 事項は、朝廷の諸案件中のごく一部だということ。残りは 各省庁の担当が、蔵人を介して関白あたりに直接もっていって決めてたらしい。 実務の場合、明らかに、その方が処理は早い。そういった 事務レベル決定(勅奏)は、太政官が上卿となり、弁官に書類作成を 命じた。それが「太政官符」である。


●上卿
 儀式や勅奏(天皇のご命令)による官符 作成の担当決めと スケジュール決め。平安京は役所数が多く、上卿は有能な人がやらないと、 それらがうまく連動せず、進行が脱線するらしいので、 重要儀式で上卿をまかされるのは有能な証拠らしい。
 儀式が政務と同じに重要なのはおかしい?いや、その.... 実はね、今をもって役所では、**落成 式典や、監督官庁からの視察対応とかの「儀式」が、市民に 役立つ実務以上に重視されているのだ。役所はそういうとこなの。

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