◆欧州激震!エルコンドルパサーのフランス遠征ロード
エルは5歳(現4歳)でフランスにわたり、そのまま引退しました。日本の重賞の方が、
はるかに賞金は高いし、遠征で滞在する費用もすごくかかるのに、
エルの陣営は、お金より、日本でのファンの歓声より、本場フランスでの
世界との戦いを選びました。
◇イスパーン賞
1999年5月、まだ寒いフランスの春。エルの欧州初戦は、いきなりG1イスパーン賞。
芝1850.鉄砲でむかえたG1ですが、エルは出遅れながら3/4馬身差の2位でした。
勝ったのはアイルランドのクロコルージュ。クロコルージュは海外遠征中心
の馬で脚質は追い込みだそうです。主な勝ち鞍が
リュパン賞とこのイスパーン賞らしい。3位以下に馬には、オルナノ・グランプリ
を勝ったカブール(名前からしてゴドルフィンの馬かな?)などがいます。
◇サンクルー大賞典
7月、2戦目は伝統あるグランプリレース、芝2400m、G1サンクルー大賞。1904年から始まった
凱旋門賞よりも歴史がある、ヨーロッパ屈指の大レースです。凱旋門賞とキングジョージの
前哨戦ともいわれます。
メンバーですが、この年もまた豪華でした。
・サガミックス
前年度(1998年)、無敗で凱旋門賞馬をとった、葦毛で大変美しい馬。このレースでは一番人気。
生涯成績9戦4勝。サンクルー大賞には
翌年も挑戦しているが、今度はモンジューが参戦しており、再び敗れてしまった。
血統はサドラーズウェルズ無関係。
☆凱旋門賞1998(YouTube)---サガミックス優勝。タイガーヒル3着。日本語実況です。
・タイガーヒル
近年のドイツの牡馬では名馬中の名馬。ディンヒル産駒。17戦10勝2着3回、
3歳には凱旋門賞で3着してドイツの3歳最優秀牡馬となり、4歳時には
最優秀古馬に選ばれています。4歳時のG1で、タイガーヒルが唯一勝てなかったのが、
このサンクルー大賞なのです。
・ドリームウェル
サドラーズウェルズの子。ゴドルフィンの馬。フランスダービー(ジョッケクルブ賞)
とアイルランドダービーを連勝した。14戦で3着以上が12回の安定した名馬。
たしか前年度の欧州ホースオブザイヤー。
・ボルジア
またまたお会いしましたわね、ボルジアお姉様。エルの1歳上の牝馬で、
ドイツダービー馬。牝馬ながら、
アメリカのブリーダーズカップターフ2着、凱旋門賞3着。牝馬というよりドイツ馬の出世頭
だった。
国際レースで強い牝馬って、あっという間に引退しちゃうのが多いんだけど、
ボルジア姉さんは違うわ。1998年にかかった屈腱炎を克服して復帰し、前ほどは
勝てなくなったけど、母国ドイツ、英、仏、ドバイ、香港、アメリカ、日本と
世界各地のレースを6歳まで走ったのでファンにはおなじみ。
☆ブリーダーズカップ・ターフ1997(YouTube)---チーフベアハートの2着。ボルジア姉さん、カッコイイ。
・グリークダンス
アイルランドチャンピオンステークスの勝ち馬。ほか、G1で2着が5回という、
これまた名馬です。そしてこれもやはり、サドラーズウェルズ産駆。
あとは、資料的によくわからない馬が数頭と、タイガーヒル、ドリームウェルの
ペースメーカーとして出走させた馬などが参加してます。欧州の大レースでは
有力馬のペースメーカー馬って必ず
出走してますね。F1みたいなチーム戦ですよね、もう。
日本ではぴんとこないけど。単独でやってくる馬が欧州で勝つためには、ペースの操作を
ものともしない、実力と精神力が必要のようです。
このようなチャンピオンホースばかりのサンクルー大賞は、残り300mくらいで
エルコンドルパサーが先頭にたち、そのままどんどん差を広げての圧勝でした。
凱旋門賞馬たちを
どんどん引き離す、ホントに強い勝ち方でした。
☆サンクルー大賞典1999(Cinegoar)
---ヨーロッパ競馬界がガクゼンとなったエルコンドルパサーの代表的なレース。
日本語の実況。(日本のYouTubeには、このビデオありません)
「強いっっ、この馬めちゃくちゃ強い!」このレースを
見ていた人は目が点になるし、フランスの新聞はエルコンドルパサー
を絶賛しました。「日本馬が、欧州最強馬たちを、軽々と破った」
「新しい時代がきた」といった表現は、その驚きぶりを物語っていると思います。
エルコンドルパサーの生涯で代表的なレースを1つあげろといったら、
凱旋門賞よりジャパンカップより、この61kgを背負って、サガミックス、タイガーヒル
たちをなぎ倒した2400m、サンクルー大賞典ではないかと思います。
◇フォア賞
凱旋門賞の1か月前の8月、足ならしレースとして、日本でも知られてきたフォア賞。
この年は、参加馬が次々棄権し、なぜか3頭立て。本当にエルは強いと
みられたようです。
その相手2頭がイスパーン賞で負けたクロコルージュとサンクルーで5着のボルジア。
クロコルージュは途中で見えなく?なり、
エルはボルジアと競って、最後は首差せり勝ちました。
◇凱旋門賞
1999年10月。そしてテレビの前で初めて生中継で見る1999凱旋門賞。うれしいですが、
心臓に悪い。メンバーは例年どおり超豪華といっていいと思います。サンクルー大賞のめんめんからタイガーヒルが抜けて、クロコルージュと次の馬たちが加わっています。
・ダリヤバ
フランスオークスとヴェルメイユ賞という牝馬のG1を連勝した、昇り調子の女の子、らしい。
地元ではちょっと期待されていた、らしい。
(しかし凱旋門賞は、超がつく重馬場でさんざんな結果に...)
・デイラミ
出走メンバー中でも屈指の名馬。この年は、
凱旋門賞と並ぶイギリスのG1キングジョージ杯(正式名称はキングジョージ6世&クイーンエリザベス・ダイヤモンド杯ですが、もーキングジョージ杯と略します)を5馬身差で圧勝した。生涯成績21戦10勝2着3回、G1レース10連戦の最後から2番目戦がこの凱旋門賞。次の
ブリーダーズカップ・ターフがデイラミのラストラン、この世界最高のレース1着で引退とは、さすが。
今回の凱旋門賞は9着。馬場が悪すぎたからなあ....なんか気の毒。
☆キングジョージ杯1999(YouTube)---やっぱデイラミは強い。これを含め、引退前のラスト3戦が国際レース・ターフのトリプルクラウン!しかも凱旋門以外はきっちり取りました。
・ファンタスティックライト
ステイゴールドのページ?でおなじみファンタスティックライト、3歳の若い頃です。
これから3年間で25戦と、国際G1レースを走りまくった、ゴドルフィンの名馬。今回の凱旋門賞をのぞく
全レースが5着以内とコンスタントに好走して、ポイントを稼いで
2000年、2001年と連続でエミレイツの世界チャンピオンに。
☆ブリーダーズカップ・ターフ2001(YouTube)---アメリカの最高峰のレース、快勝です。
・モンジュー
アイルランドの馬だがフランスで調教され活躍した。フランスとアイルランドの
ダービー馬で、凱旋門賞とキングジョージ杯、サンクルー大賞も制した。
生涯成績は国際G1ばかり走って16戦11勝。このメンツでも最高の馬でしょう。
サドラーズウェルズ産駒。(※産駒成績も大変よく、父の後をつぐサイヤーと言われている。)
☆キングジョージ杯2000(YouTUbe)---かなりのメンバーなのに楽勝、さすがです。
1番人気は4歳馬(現3歳)のモンジュー、
サンクルー大賞のあとでも、エルよりもオッズがいいんだから、
モンジューは本当に強そうです。モンジューは斤量がエルより3キロ軽いので
それもあるのかな?。
レースは、エルが逃げてるように見えましたが、不良馬場のせいで
ペースは異様に遅かった。のろのろのままでは
かえってまずそうなので、あれでいいと思います。そのままいかせた、と
蛯名騎手は後に語っておりますね。エル的には普通のぺースで走っており、
最後の200mで通常どおりスパートをかけて、他の馬をひき離しています。
しかしモンジューは、この追い込みにむかない不良馬場をものともせず、
後方から一気にやってきました。ぐんぐんエルとの差を
縮め、並んでからも粘るエルをゴール直前で差し切った
モンジュー、これまた恐ろしい馬です。残りの馬は、馬場のせいかヨレヨレで、
4着以下は10馬身以上の大差でした。
☆凱旋門賞1999年(YouTube)
---今やあちこちで見ることができるアルク1999。走ってる、と言えるのは3着の
クロコルージュまでな気がする、各国の超名馬たちがヨレヨレ・ボロボロのレースです。
各国G1馬を、後方のテレビに写らない位置まで引き離したエルは、
地元フランスをはじめ各国のメディアに「今年の凱旋門賞は優勝馬が
2頭いる」と
たたえられました。生中継の授賞式も、2着のエルが紹介されると
すごい拍手でした。
英語のアナウンサーは延々とエルの話をしています。
ロンシャンて、緑が多くてほんとうに美しい競馬場です。うーーーん、
ここにいるの、ホントにあのエルコンドルパサー?2歳の時からよく
知っている... 本当に夢のレースでした。少なくとも私には。
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あれから、海外にいく馬は少しづつ増えました。でも、日本の競馬史の
最高のシーンってこれじゃないかなあ。ここにいきつくまでが、もう、
えらい長かったからね。
チャレンジしてチャレンジして...勝てなくても
チャレンジした歴史の上にこの夢のレースがあるんだにゃ、と思います。
・日本馬の凱旋門賞出走の全記録は、スピードシンボリ8着以下、メジロムサシ18着、シリウスシンボリ14着、エルコンドルパサー2着、マンハッタンカフェ13着、タップダンスシチー17着、ディープインパクト3着(失格)、メイショウサムソン10着。
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